財務分析で使用する4つの分析手法

経理

経理担当者は財務諸表を作ることに主眼を置きがちですが、財務分析までできると大きな武器となり、経営の改善にも関わることができるようになります。今回は財務分析とはどのようなものか、そして文責の際に必要な4つの視点についてお伝えいたします。

財務分析とは

財務分析とは財務諸表を利用し、会社の経営状況および財務状況を客観的に分析する手法をいいます。ここでは財務分析の基本的な知識について、順を追ってご説明します。

財務分析の種類は二つ

財務分析は分析データの利用者に応じて、内部分析と外部分析の二つの種類に分かれます。

・内部分析とは、会社の経営者や従業員が実施する分析です。会社の経営者は、経営の健全性や方向性などを決定するため、また従業員は会社の経営が順調であるかを確認するために内部分析を行います。
・外部分析とは、融資先である金融機関や取引先、そして出資者などが実施する分析です。会社の信用性や成長性などを取引に値するか判断するために外部分析を行います。

財務分析の比較方法は二つ

財務分析は必要な書類を集めて比較して行います。比較方法には次の三つがあります。
・同期間での比較として、年次決算と対象期間を限定して比較する方法があります。
・同業他社との比較では、競合先と比較することにより、自社の長所や短所を調べます。
いずれの方法でも、比較するデータは3~5年分集めることが一般的です。

財務分析に必要な書類

財務分析では三つの決算書が必要です。一定規模以上の会社ではこれらの書類を作成していますので、おおむね5年分の決算書を用意し、各年のデータが比較し推移を検討します。ここでは財務分析に必要な三つの書類をご紹介します。

貸借対照表

貸借対照表はある時点での会社の財産状況を記載した決算書をいいます。会社の事業を行うため、何に資金を投じたのか、資金の運用形態はどうなのか、また、どうやった資金を集めたのか、資金の調達源泉をまとめた表のことです。資金の運用形態として資産の部、資金の調達源泉として、負債および純資産を記載します。資産の部と負債および純資産の合計額は必ず一致するため、バランスシート(B/S)とも呼ばれます。

損益計算書

損益計算書は1年間の会社の経営成績を記載した決算書をいいます。1年間の起算日は自由に決定できますが、官公庁の年度に合わせ4月1日~3月31日までとしている会社が多いです。損益計算書はP/Lとも呼ばれ、収益―費用=利益の三つの要素でまとめられます。損益計算書は大きく分けて次の損益計算から構成されます。

・営業損益の部では、本業による利益を表します。
・営業外損益の部では、本業以外による利益を表します。
・経常利益の部では、本業による営業利益に加え、本業以外の財務活動による利益を表します。
・特別損益の部では、臨時の利益もしくは損失を表します。
・当期純利益の部では、経常利益に特別損益を加算したものを税引前当期純利益といいます。税引前当期純利益から法人税や住民税などを引いた金額を当期純利益といいます。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は会社の一定期間の現金の増減を、会社の活動別に表した決算書をいいます。キャッシュフロー計算書では、以下の三つから構成されます。
・営業活動によるキャッシュフローとは、会社の本業に関する活動です。
・投資活動によるキャッシュフローとは、資金の貸付け、融資活動などの活動です。

財務分析で必要な4つの視点

会社の状況を分析するには4つの視点が必要です。これまで財務分析の基本的な考え方をお伝えしましたが、基本に忠実であればこちらでご紹介する4つの視点は決して難しくありません。大切なのは分析値をどのように利用するかです。以下、4つの視点について順にご説明しますので、ご参考にしてください。

収益性分析

会社がどれだけの収益を上げているかを分析します。
・祖利益率=売上高総利益÷売上高×100
売上高総利益率ともいい、会社の大まかな利益率を表します。
・売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100
売上に対し会社の営業利益どれくらいあるのか数値で表します。

安全性分析

会社の支払能力を分析します。財務状況が健全であるかを調べることが可能です。
・流動比率=流動資産÷流動負債×100
短期的な支払能力を分析します。数値が小さいほど支払サイトが短い傾向となり不安定な財務状況であると評価されます。
・自己資本比率=自己資本÷(自己資本+他人資本)×100
自社の資本の割合を分析します。数値が高いほど自社の資本が多いことを意味し健全であると評価されます。

生産性分析

従業員や設備の生産性を分析します。従業員の生産性を分析する方法として、労働生産性をお伝えします。
・労働生産性=付加価値額(経常利益+人件費+財務費用+賃借料+租税公課)÷平均従業員数
会社の付加価値をどれだけの人数で生み出せたか分析します。

成長性分析

会社がどれだけの成長をしているか分析します。次の二つの方法で、売上や利益の成長性を分析します。
・増収率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100
・増益率=(当期経常利益-前期計上利益)÷前期経常利益×100

まとめ

財務分析は企業の経営の改善をするうえで欠かせない業務です。経理担当者の方は日次、月次などの業務も大変だとは思いますが、財務分析までできるようになると大きなスキルアップにもつながるので、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。