財務諸表の一つ「キャッシュフロー計算書」とは?その内容と見方のポイントを解説
経理
今回は財務諸表を構成する資料の一つである「キャッシュフロー計算書」。今回はキャッシュフロー計算書をご紹介します。
キャッシュフロー計算書とは
財務諸表または決算書と呼ばれる書類の中には、必ずキャッシュフロー計算書が入り、損益計算書と貸借対照表の2点では追えない現金の流れと増減を追うものです。
また、納品・請求から入金までのタイムラグを追う役割もあるので、ステークホルダーや経営者にとって読み解かなければならない書類でもあります。
キャッシュフローとは
キャッシュフローとはシンプルに「お金の流れ」です。現金などが入れば「キャッシュイン」、出ていけば「キャッシュアウト」と呼びます。
つまりキャッシュイン−キャッシュアウト=キャッシュフローとなります。
キャッシュフロー計算書では「発生主義」と「現金主義」という考え方があり、企業会計原則では発生主義が基本とされています。
発生主義と現金主義の違い
発生主義と現金主義の大きな違いは「どの時点で仕訳を行うか」です。
企業会計原則では「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。」と記されています。
発生主義と現金主義を8月1日5,000円分の取引発生、9月1日入金ありという例で確認してみます。
【発生主義】
取引が発生した時点で仕訳を行います。
8/1 借方:売掛金 5,000円 / 貸方:売上高 5,000円
9/1 借方:普通預金 5,000円 / 貸方:売掛金 5,000円
【現金主義】
入金があった時点で仕訳を行います。
8/1 仕訳なし
9/1 借方:普通預金 5,000円 / 貸方:売上高 5,000円
納品や請求書発行してすぐキャッシュが入れば一番シンプルですが、入金までタイムラグが生じる取引も少なくありません。さらに前述した例に決算日が入ると、前期と当期の利益でもズレが生じます。このズレを生まないためにも「企業会計原則で損益計算は発生主義」という原則が作られているのです。
また、キャッシュフロー計算書では「損益」と「収支」が必ずしも一致しないケースもあります。
損益と収支が一致しない事例
損益と収支が一致しない次の例では、それぞれ期間損益と収支で補正しなければなりません。
【費用は計上、現金支出なしのケース】
減価償却費で固定資産を費用にする、引当金から退職金や賞与を支出するなど、費用として計上するものの現金支出ではありません。
【費用は計上せず、現金支出ありのケース】
社用車を購入する場面では、現金支出ありでも固定資産の購入なので費用計上ではありません。
また、借入金を用意した場合も現金は増えていますが収益にはあてはまりません。
キャッシュフロー計算書の区分と勘定科目
現金の流れをチェックするキャッシュフロー計算書の区分は3つ。
・営業活動によるキャッシュフロー
・投資活動によるキャッシュフロー
・財務活動によるキャッシュフロー
それぞれの活動でキャッシュフローを追っていきますが、決算書類では損益計算書と貸借対照表を作成した後に、勘定科目ごとの変化をチェックしてキャッシュフロー計算書を作成します。
営業活動によるキャッシュフローと勘定科目
通常の営業や取引で得たお金を示すのが、営業活動によるキャッシュフローです。
表すには「直接法」と「間接法」があり、簡単に作れる間接法が主流となっています。
直接法は間接法より手間がかかるものの、シンプルで読みやすいのが特徴でしょう。
お金が流れた理由を必ずしもキャッチできるわけではありませんが、間接法を読み解けばキャッシュフロー計算書の重要性に気づけます。
【営業活動キャッシュフローの勘定科目】
・税引前当期純利益
・減価償却費
・投資有価証券売却損益
・固定資産売却損益
・売上債権や仕入れ債務の増加額
・棚卸資産の減少額
・その他試算や負債の増加額
・税金の支払額
これからご紹介する投資活動・財務活動でない勘定科目なら、営業活動キャッシュフローへ分類します。中にはキャッシュの動きではないものもありますが、プラスとなればキャッシュがある経営状態で営業活動が順調だといえるでしょう。マイナスになった場合、経営者は薄利な商品の修正や現金回収率を見直す必要があります。
営業活動の稼ぎを算出する(キャッシュフローマージン)式は次のとおりです。
・キャッシュフローマージン=営業活動によるキャッシュフロー÷売上高
一般的な目安としては「売上高の7%が営業活動によるキャッシュフロー」となれば高評価ポイントと言えるでしょう。
投資活動によるキャッシュフローと勘定科目
企業成長においてどれほど投資したかを示すのが、投資活動によるキャッシュフローです。一般的に、健全な投資活動を行えていれば、キャッシュフローの算出結果はマイナスでも問題ありません。
必ずしも投資活動によるキャッシュフローが悪いわけではありません。むしろ、企業成長と投資は比例することから必要な支出と考えるべきです。
勘定科目は以下のとおりです。
・定期預金の純増減額
・固定資産売却による収入
・固定資産取得による支出
・投資・有価証券の取得や売却による支出
投資への積極性を測るポイントは「固定資産の取得による支出」と、「減価償却費」「減損損失」の比較です。固定資産の取得による支出が減価償却費(減損損失)より多い場合は、高い積極性があると評価できます。
財務活動によるキャッシュフローと勘定科目
勘定科目の中でも出資や借入が、財務活動によるキャッシュフローになります。
勘定科目は以下のとおりです。
・短期借入金の純減少額
・長期借入での収入
・長期借入金の返済
・配当金の支払額
財務活動によるキャッシュフローがプラス表示だと借入あり、マイナスなら借入金の返済ありとなるので、最終的にプラスの結果であれば資金調達金額が返済額より多いと判断できます。
キャッシュフロー計算書の見方
キャッシュフロー計算書の見方で、特に意識すべきポイントは次の3つです。
・基本的な見方
・関係する部署に助言を行うための情報
・経営者に経営判断となる資料を提供するための情報
キャッシュの増減を把握すれば、調達から運用までの中で弱みや修正すべきポイントの洗い出しが可能となります。経営者にとって会社の方向性を判断する大切な情報なので、それぞれチェックして役立ててください。
キャッシュフロー計算書の見方の基本
キャッシュフロー計算書を読み解くにあたり、関係書類を読む順番は意識しましょう。
貸借対照表で資産と負債をチェック
↓
損益計算書で収益の流れと収益額をチェック
↓
キャッシュフローで資金の流れと額をチェック
以上のように漏れなくスムーズに読み解くためのコツなので覚えておきましょう。
関係する部署に助言を行う
キャッシュフロー計算書で理想的な流れは「営業キャッシュフローの増加」です。増加の幅が大きければ大きいほど良く、経営方針や方向性、ビジネス戦略の成果と言えるでしょう。
営業キャッシュフローの増加には「当期純利益がプラス」という要素が欠かせません。ただ、売掛金の回収と買掛金の支払いで残高不足しがちならば、資金繰りについても練り直す必要があります。
スムーズな請求書発行や適切な原材料仕入れで、過剰在庫を回避することも一つの手です。
キャッシュフロー計算書の評価を高めるなら、営業キャッシュフローが増加するような戦略が必要なのです。
経営者に経営判断となる資料を提供する
これまで紹介してきた経理の情報は、経営者にとって省略すれば命取りにもなりかねないものばかりです。キャッシュフロー計算書でも流れ・動きと結果を隅々まで把握し、実際の業務内容を考慮しつつ改善策や補正ポイントを練りましょう。
不要な設備投資の洗い出しや、生産性向上といった改善策は、ステークホルダーへの好印象にもつながります。
キャッシュフロー計算書の読み解きは全て実益へ直結しているので、経営者は重要な情報が詰まった資料として具体的な行動へと繋げてください。
まとめ
キャッシュフロー計算書で企業のお金の流れを読み解いて、キャッシュフローの改善につなげていきましょう。