財務諸表の役割と財務三表を読み解くポイントとは?
経理
3月の決算時期が近づいてきており、そのときに使われる資料でよく耳にするのが「財務諸表」。ビジネスパーソンであれば読み解くことができたほうがいいと言われていますが、財務諸表とはどういったことが書かれた資料なのか解説いたします。
財務諸表とは?
財務諸表とは決算で最終段階に作成される書類です。会社法では「計算書類」、金融商取引法では「財務諸表」と呼び分けられているものの、内容は大きく変わりません。ここでは金融商取引法で定める財務諸表についてお伝えします。
財務諸表とは
財務諸表で作成する書類は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、附属明細書の五種類です。また、財務諸表の中でも、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つは「財務三表」と呼ばれています。
経営者にとっては経営の反省や改善、方向性の決定や修正、資金集めに必要な情報詰まっており、読み解けなければならない重要書類でもあります。ここからは財務三表の役割と読み解き方をお伝えします。
損益計算書
年間の経営成績をまとめたものが損益計算書で、収益・費用・利益を記入します。別名「P/L」とも呼ばれ、損益計算書でわかるのは「利益」です。どれだけの費用をかけ、どれだけの収益があがったのか、そして最終的な利益はいくらだったのかを明らかにしています。
経営成績としては、売上総利益や営業利益などの営業損益計算、経常利益計算、税引前当期純利益や当期純利益などの純損益計算などの区分で判断できるようになっています。
貸借対象表
決算日の財政状態をまとめたものが貸借対照表で、資産・負債・純資産を記入します。別名「B/S」とも呼び、貸借対照表でわかるのは、資金調達の流れ、資金を資産へ変える流れ「資金の動き」です。
貸借対照表における3つの項目と分類は以下のとおりです。
【資産】
・表の左側(借方)へ記入
・流動資産や固定資産を記入
【負債】
・表の右側(貸方)へ記入
・流動負債や固定負債を記入
【純資産】
・表の右側(貸方)へ記入
・純資産を記入
資産=負債+純資産という「貸借一致の原則」が基本です。
キャッシュフロー計算書
名前の通り「キャッシュ(現金)」と「フロー(流れ)」で、現金の流れを可視化するのがキャッシュフロー計算書で、別名「C/F」と呼ばれます。
キャッシュフロー計算書は、以下の3種類です。
・営業活動によるキャッシュフロー(営業損益に関連した取引)
・投資活動によるキャッシュフロー(営業活動外での資産に関連したもの)
・財務活動によるキャッシュフロー(営業活動外での負債・純資産に関連したもの)
読み解くポイントは、どのような活動が行われ、その結果、キャッシュフローの増減はどうなったかなどです。
例えば利益を返済へあてた場合、当期純利益=キャッシュ増加、とはなりません。貸借対照表と損益計算書だけでなくキャッシュフロー計算書にも注目することで、会社の状況の資金の流れを知ることができます。
財務諸表の役割
財務諸表がもつ最大の役割は「会社の財政を明らかにして提示すること」です。そしてステークホルダーへの情報開示と、経営者にとっても重要な資料になります。
財務諸表を読み解くと「高い売上でも低い純利益」や「コスト高で利益率が悪い」といった分析がスムーズになります。また、経営ではコスト削減と利益増加が重要なカギであり、戦略の基盤です。財務諸表から課題・改善点を洗い出し事業戦略の参考にするのが経営者の基本です。
財務諸表を読み解くポイント
財務諸表を読み解くポイントは、収益性の分析と評価、効率性の分析、投資効果の分析、資金の流れの分析など4つあります。財務諸表に含まれる書類を、それぞれ4つの観点から分析することでより深掘りした状況判断材料をつかめます。
収益性の分析と評価
収益性の分析とは「会社がどれくらい収益をあげる力があるのか」を読み解くことです。例えば損益計算書でシンプルな利益を把握でき、収益性が高い=利益を生み出す力があると提示することで、出資や融資を獲得しやすくなります。
収益性の分析と評価では次の項目をチェックします。
・売上総利益や営業利益などの営業損益計算
・経常利益などの経常損益計算
・税引前当期純利益や当期純利益などの純損益計算
また、売上高営業利益率でも会社の本業がどれほどの稼ぐ力を持っているのか判断できます。別名「粗利率」とも呼ばれ、次の式で算出します。
・売上高営業利益率(%)=売上総利益(営業利益)÷売上高×100
例えば前年比で売上高総利益率が下がっている場合、要因として単価ダウンや仕入原価・製造原価の増加が考えられます。
効率性の分析
効率性の分析とは「資産や負債の回転率を調べて売上高や利益がどれくらい出ているか」を読み解くことです。
効率性の分析
総資産をもとにどれくらいの売上高を得たのか、総資本をどれくらいのスピードで回収したのかを知るのが目的です。
・総資本回転率=売上高÷総資本
指標が高いと回収スピードが速いと判断できプラス評価となります。
売上債権回転率も資産活用度を紐解くポイントとなり、効率性分析に役立ちます。
・売上債権回転率=売上高÷(売掛金+受取手形+割引手形)
・売上債権回転日数=(売掛金+受取手形+割引手形)÷売上高÷365日
回転率により債権回収のスピード感、回収までかかった日数を把握できます。
投資効果の分析
投資効果の分析においては「成長性」に着目します。財務諸表で見る成長性とは、会社としてどれくらい成長したか、資産がどれくらい伸びたか、今後の成長が期待できるかなどです。
ステークホルダーは売上高や総資産の変化を読み解いて、今後の投資(または融資)すべき会社に値するかを判断します。経営者はその伸びが健全なのか、急激な伸びで業務とのバランスが崩れていないか、市場の成長率と比較して来期の戦略をどう修正していくかなど判断材料とします。
・売上高成長率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100
・経常利益成長率(%)=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100
売上高成長率は、前期と今期の損益計算書を比較して売上高の増減を数値化したもので、経常利益成長率も同様で、基本的に数値が高ければ成長していると判断できます。
資金の流れの分析
資金の流れを分析する場合、貸借対照表とキャッシュフロー計算書を読み解きます。資金や現金の流れが適切か、現時点ですぐ使える現金はどれくらいかといった情報に着目します。
特に着目すべき項目は次のとおりです。
・税引前当期純利益や減価償却費がプラスなら利益は多い。
・有価証券取得での支出や有価証券売却での収入がマイナスなら成長への投資をしている可能性があり、またプラスなら資産を売却し、経営状態悪化の可能性があります。
・借入金の収入と返済による支出がマイナスなら財政余裕のある可能性があり、またプラスなら負債が多い可能性があります。
特に、プラスならば良いわけでなく、その先にあった活動に注目することで本質をつかめます。
まとめ
財務諸表の役割や意味を理解して、自社や他社の財務状況を読み解けるようになりましょう。